逢い引き

 A子から頼み事をされた。
A子はもうすぐ引っ越すらしく
最後の思い出に祇園祭に片想いのOくんと
行きたいから連れて来て欲しいと。
F田と僕はそうたのまれたのだが困った。
A子がO君のことを好きなことは学校中の
ほとんどの人が知っていて、当然Oも知っていた。
そして露骨に、加えて相当嫌がっていた。
とりあえず僕の家に三人で遊ぶ約束をして
A子のことは言わずに祭りに連れて行こうって
作戦になった。
そして作戦通りいきそうだった。
ところが、家でダービースタリオンってゲームしてると
ものすごい雨が降り始めた。
当然Oは今日は祭りには行かないやろって言います。
焦ります僕ら。慌てて、A子に電話します。
繋がらない。どうやら家をもう出てしまっているようだ。
どうしようと落ち着かない僕らを見て、あやしいと
勘ぐり事情を問いつめてくるO。
やむおえなく、A子のことを話す。
……断然拒絶。
必死に説得するF田と僕。
一時間くらい頑張る。しぶしぶ出発までこぎつける。
ただこの時ですでに待ち合わせ時間30分くらい過ぎてたけど。
バスで行ったらいいくらいの距離やったけど、変なテンションやった
から一時間くらいかけてゆっくり歩いていく。
もう本当にびしょ濡れ。oの気を紛らわすために必死やった。
神社に着く頃には待ち合わせ時間から二時間近く経っていた。
このどしゃぶりの雨やしもう待っていないやろうと三人とも
言いはしなかったけどそう思っていた。そう願っていた。
案の定、祭りに行こうって人は誰もいないし…
そうして待ち合わせ場所まで行ったら…


A子を真ん中に10人以上の浴衣を着た女どもが!
他には誰もいないその場所で一本の道路越しに
対峙するびしょ濡れの男三人と、この雨の中
二時間待っていたのか浴衣女集団。
どうしたらいいのか混乱する僕。
とりあえずそのままの距離で
「出店やってるの?」
って質問から入ってみる。
怖くて顔は見れなくてA子以外が誰なのか分からなかったが
明らかに切れてるますよね?って分かってしまう空気が漂っていた。
一応
「やってなさそう」
って返事は返ってきた。
これからどうする??ってパニックになっていたら
さーっとoが去って行った。
「ちょっと待ってーな!」
って言葉なんて届いてないかのごとくどんどんと
遠ざかるO。どうすればいいんだよ僕は!?
F田がOを追っていく。
一人取り残される訳にはいかない!
「ごめん。」
って届いたか分からない震えた声言って、慌てて
二人を追った。


 ほとんど会話もせずに帰り道を歩いた。
冷え切った体を温めるためにラーメン屋に入った。
暖かかった…
体と心を温めてくれました…